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深夜のショウコ
「……ママぁ……。おなか痛い……」
ミカの弱りきった声に、私は起こされた。
真っ暗な寝室で目も慣れないまま起き上がり、隣で横になっているミカに「大丈夫?」と呼び掛ける。
──また嫌な夢を見たのかもしれない。
それとも、朝が来るのが怖いのか……。
私は、ミカの額から髪にかけてをそっと撫でた。
こんなことは、一度や二度ではない。
小学校に入学したばかりのミカは、学校生活に馴染めない様子だった。
元々おとなしくて恥ずかしがり屋な子だから、自分から他の子に話し掛けることもできず、俯き加減でもじもじしてしまう。
そんなミカに、クラスの子たちはいろいろと茶化したり笑ったりするようになり、ミカの心はどんどん傷ついていった。
このおなかが痛いと言うのも、精神性のものだろう。
通学途中に、吐き気を覚えて座り込むこともあるという。
私はミカのおなかを撫でながら、この子が不憫でしょうがないと思った。
この子の性格にも難があるにせよ、ここまで追い詰められて新しい学校生活にも立ち後れてしまい、幸先が不安だった。
「……とりあえず、一回起きようか?」
そう言ってミカを起こし、隣で寝ている夫を起こさないように寝室から連れ立った。
いつもならミカをなだめて寝かし付けるのだが、今日は起きたい気分だった。
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