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「トイレに行きたい」と言うミカを誘導し、私はその間ホットミルクを入れようと思い、キッチンに立った。
時計を見ると、ちょうど3時だった。
私用のマグカップとミカ用のマグカップに牛乳を注ぎ、電子レンジに入れる。
時間をセットして、スタートボタンを押す。
オレンジ色の照明の中で回る二つのカップを、ぼんやりと眺めた。
ミカの心が病んでいると知ったのは、担任の先生の連絡を受けてからだった。
『ミカちゃんが門の前で気持ち悪いと訴え、そのまま保健室に行くことが多いんです』
『他にも、授業中に頭が痛いと言って保健室へ連れていくことも多くて……。私どもも気を付けておりますが……』
ミカは、学校で嫌な思いをしていることを、私にも先生にも話さなかった。
すぐに我慢してため込んでしまう子だし、子供心ながらに惨めで恥ずかしいという思いがあったのかもしれない。
連絡を受けてから、私はミカの目を真っ直ぐ見て問い掛けた。
学校でのこと、クラスのこと、授業での様子。
するとミカは、泣きながらクラスの子たちに言われている言葉を話してくれた。
『何でしゃべんないの?』
『どうして教科書ハッキリ読めないの?』
『先生もちゃんと大きく口開けてハッキリ読まなきゃいけないって言ってるのに、どうしてやらないの?』
みんなの前で何かを発表する時、声の小さいミカに「聞こえませーん」とクスクス笑いながら野次る子たちもいるのだという。
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