屋上の天秤

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家を飛び出した時刻は、確か午前2時頃だったか。 夜更かし気味の兄が寝るのを待っていたらこの時間になってしまった。 羽織ったパーカーがなくとも過ごせそうな、温い風が木の葉を揺らす。 所謂手のかからない子として育った僕は 今日という日までこんな時間に外出などしたことなどなかった。 中学2年の暑すぎる初夏、初めての非行はまさに逃避行だった。 何をしたわけでもない。何を望んだわけでもない。 いつも僕は独りだった。初めて孤独を知ったのは小学3年。 僕をいないものとしてからかう、今思えばありがちな遊び。 あの時の、胸から肩にかけてゾワリと震え立つ感覚は今も覚えている。 その日を境に、僕の心という器官は過敏になった。 ざわつき、重くなり、ある時は他の器官にまで影響を及ぼした。 吐き気がした。眩暈がした。頭痛がした。 痛くもないのに涙が出るようになった。
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