屋上の天秤

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グラグラと揺れる天秤。 傾いたほうに流れていくのは摂理だろう。 どんどんと、錘は増えていった。 小学校を卒業するまで爪は食い込んだままだった。 中学にあがり、ほんの少し抱いていた期待も軽く打ち砕かれる。 結局は延長線の中にいるのだと、1週間もすれば気が付いてしまった。 父も母も働いていた。家に帰ってくる時間はいつも僕より遅かった。 5つ上の兄は既に高校生、あまり僕らの間に会話は無かった。 両親も疲れたようなくたびれたような顔をいつもしていた。 言えなかった。何も。 溜まっていく錘を減らす手段はなく、日々醜悪な仕打ちと 好奇の視線にさらされながら過ごしていくうち 沈んだ天秤の先に、死という選択肢が見えてきた。
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