0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
グラグラと揺れる天秤。
傾いたほうに流れていくのは摂理だろう。
どんどんと、錘は増えていった。
小学校を卒業するまで爪は食い込んだままだった。
中学にあがり、ほんの少し抱いていた期待も軽く打ち砕かれる。
結局は延長線の中にいるのだと、1週間もすれば気が付いてしまった。
父も母も働いていた。家に帰ってくる時間はいつも僕より遅かった。
5つ上の兄は既に高校生、あまり僕らの間に会話は無かった。
両親も疲れたようなくたびれたような顔をいつもしていた。
言えなかった。何も。
溜まっていく錘を減らす手段はなく、日々醜悪な仕打ちと
好奇の視線にさらされながら過ごしていくうち
沈んだ天秤の先に、死という選択肢が見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!