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11月◎日(最終回)
「美香子さん、これ、揚げたての唐揚げです。お酒のおつまみにどうぞ」
「あ、ありがとう…」
「他にも、おつまみ作りますから待ってて下さいね」
エプロン姿で台所に立ち鼻唄混じりで調理をする尊を見て、食卓で向かいにいる俺に美香子は小声で言った。
「なんか尊君、女っぽく見えるんだけど…」
「エプロンのせいだろ」
「そうかしら…もしかして女に目覚めたんじゃ」
「バカ言うなよ」
「ところで幹一、この家、売るんじゃなかったの?」
「ああ…」
「じゃあ、なんで尊君がいるのよ?」
「それは…」
新婚旅行から帰ってきた親友の自慢話を聞かされた美香子が、一升瓶の酒を持って愚痴を言いに俺の家にやって来た。
この前、美香子に家を売ると言った手前、尊がいることを説明しなきゃならないのだが…
「だだいま戻りました」
「えっ!?ちょっと幹一、なんで畦倉真知がこの家に帰って来るのよ!!??」
ガタン!!
突然の畦倉真知の登場に仰天した美香子が立ち上がったと同時に座っていたイスも倒れた。
「それは…」
どう説明したらいいものやら…
あの日…
畦倉真知は、あんなことをしてしまってと俺に謝るだけ謝って仕事があるからと帰ってしまい、俺一人が尊に説明と言い訳をする羽目になってしまった。
「酒に酔った弾みだよ。あいつ相当、酒に弱いみたいで」
仏壇を背に腕を組み胡座をかいている尊の向かいで正座する俺は、まるで説教されているみたいだ。
「真知のヤツ、僕が勧めても絶対、一滴も飲まなかったのに、黒田さんが出したビールは飲むなんて…」
「年上好きだからだよ、きっと」
「黒田さんも黒田さんですよ。真知の前で恥ずかしい姿を晒すなんて…それに、なんで抵抗しなかったんですか?」
「だって、あいつの力が強くて、それに…あの時はお前に事の寸前でとんずらされたせいで悶々としてたから」
「僕のせいだって言うんですか?」
「いや、そういうわけじゃ…」
「…黒田さん、今すぐ素っ裸になって四つん這いになって下さい」
「えっ?」
「黒田さんが、そんなに僕を欲しがっていたとは知りませんでした」
「欲しがってなんか…」
図星を突かれた俺は否定できなかった。
「あの時の続き、したくないんですか?」
「それは…」
「したいなら服を全部、脱いで下さい」
この前、俺が尊にしたことをやっと俺もされる…
ゴクッ
俺は期待で喉を鳴らしてしまった。
「服、脱ぐから後ろ向いててくれ」
「今さら何を恥じらうんですか。ほら立って、さっさと脱いで」
「急かすなよ」
何度も見られているはずなのに、尊がじっと見ている前で服を脱いでいくのは、なぜか恥ずかしくて興奮してくる…
「もう、大きくなってますね」
「わ、悪かったな」
「さ、四つん這いになって下さい。……違いますよ、僕に顔向けるんじゃなくて」
「逆だと仏壇に俺の尻を向けることになるじゃないか!そんな罰当たりな…ん!んん…ん!…ハアハア…尊」
「口を開けてせがんでも、もうしませんよ。キスなら後で、もっとしてあげますから早く向きを変えて下さい」
「…分かった」
尊に深いキスをされて火がついた俺は、ご先祖様に申し訳ないと思いつつ身体の向きを変えた。
「……ヒッ!尊、お前!」
「先だけですけど、僕も大きく硬くなってるの分かるでしょ?」
「分かる、けど…尊、まさか、このまま入れないよな?…なあ、尊?イッ!ヤメッ尊!お前、ゴム!イッ痛いって…俺だって初めてなんだぞ!もっと優しくしろよ!」
「僕は黒田さんみたいに優しくありませんよ…ほら、力を抜いて」
「アッッ!!」
尊にモノを掴まれ、俺は衝撃の快感で腰が砕けそうになった…ところを尊が、
「イタッ!痛いよ尊!イタッ…イ…」
両手をギュッと握りしめ涙目になりながら痛みを我慢する俺の耳元で尊が残酷に囁く。
「もっと痛くしてあげますよ黒田さん。僕以外の男の手でイッたお仕置きです」
「お、お仕置きって…イッ!!!尊、も…もう…ヤメッ…イタッ!!…尊、これ以上は、もう…イヤッ、ヤメッ!!」
これ以上は耐えられないと俺は逃げ出そうとしたが突然、逃げる前に痛みが遠のいた。
「離せよ真知!!」
「真知?…畦倉真知、なんでここに!?」
振り返ると畦倉真知が尊の首根っこを掴み、俺から尊を引き剥がしていた。
「黒田さん、痛がってるだろ。大丈夫ですか?」
「あ、ああ…」
「真知、お前、仕事に行ったんじゃなかったのかよ!」
「マネージャーに無理言って仕事の時間を少し遅らせてもったんだ」
「イテッ!何すんだよ真知!」
畦倉真知は尊を手離したが、放り投げたも同然だった。
放り投げられた尊は仏壇の前で思い切り尻餅をついていた。
「黒田さん」
「えっ?…あっ、あわわ!」
畦倉真知に見下ろされ、自分のあられもない姿を思い出した俺は、慌てて胸と股間を手で隠した。
「な、なんだ?」
畦倉真知は俺の前に正座をすると、畳に額がつく位に頭を下げた。
「自分、タクシーで、あんなにぐっすり眠ったの初めてでした!!黒田さんのそばだから安心できたんだと思います!だからお願いします黒田さん!自分をこの家に置いて下さい!!」
「えっ…いや、ぐっすり眠ったのは、ただ疲れてただけだと思うが」
「真智、お前がこの家に住んでも迷惑になるだけだ。家事も何もできない役立たずなんだから」
「おいおい尊、言い過ぎだぞ、それは…」
「黒田さん…」
顔を上げた畦倉真知は今にも泣きそうな顔をしていた。
「役立たずじゃダメですか?」
潤んだ瞳のイケメンに見つめられると思わず言ってしまう。
「ダメじゃない」
「ちょっと黒田さん!!」
「だって尊、畦倉真知は俺のそばだと安心して眠れるから、ここにいたいって言ってるだけなんだぞ」
「それだけじゃないだろ真知」
「ああ…」
「えっ?それだけじゃないって、どういう…えっ?ちょっ、おい!どうした畦倉真知!?」
いきなり畦倉真知に抱きつかれ俺は抵抗するよりも動揺した。
「黒田さん、フルネームじゃなく、自分のことは名前で呼んで下さい」
「な、名前でって…そんなことより離してくれよ!」
「自分は尊みたいに痛い思いはさせません。だから黒田さん、自分に黒田さんを抱かせて下さい!!」
イケメンの熱い抱擁のせいで俺の身体も熱くなる…。
ああ、このまま抱かれても、いい…かも。
「ちょっと待った!!」
突然の尊の大声に、イケメンの熱にポーッとなりフワフワしていた俺は我に返った。
素っ裸の俺がイケメン俳優の畦倉真知に抱かれている。
なんで、こんなことになってるんだ?
自分が置かれている状況が段々分からなくなって来た…
「僕は黒田さんがお前にあんなことされたって聞いて、僕以外の男の手でイッた黒田さんにムカついた」
ああ、だからお仕置き…だからってアレは痛すぎだぞ尊!
「その時、気づいたんだ。僕は黒田さんを誰にも渡したくないんだって!」
「自分も黒田さんを誰にも渡したくない」
なんか、こいつら俺を取り合ってるのか?
なんで、こんなことになってるのか理解はできないが言いたいことはある。
「ちょっと待った!!お前ら俺の気持ちを無視して勝手に話をしてんじゃねえよ!俺は誰のものにもなら」
「なら勝負をしよう真知。これから、この家に2人とも住んで黒田さんに僕と真知のどっちかを選んでもらおう」
「分かった。その勝負受けよう」
「お前ら勝手に何言ってんだよ!」
「そういうことで黒田さん、僕と真知、どっちを選ぶか決めてもらうために…」
「ちょっ!2人で押さえ込むなんて卑怯だぞ!ヤッ!尊、ヤメッ…そんな強く握っちゃ…アッ!!…ヤッ、畦倉真知、そんな乳首吸っちゃ…アッ!イヤッ!アッ!ヤッ…尊、ヤメッ…ヤッ…アアア~~~!!!」
「幹一!なんで畦倉真知がこの家にいるのか説明しなさいって言ってるでしょ!!」
「真知、こいつは親戚の美香子だ。お前を見て興奮状態で危険だから早く2階に上がれ」
「了解しました」
「ちょっと待って!!えっと…私まだお酒飲んでないわよね?だから幻じゃないわよね?本物の畦倉真知よね!?」
「落ち着けよ美香子」
「これが落ち着いていられますか!早く説明して!」
「それは…」
尊と真知、俺がどっちかを選ぶために2人がここにいる…なんて説明を美香子
にできるわけがなく…
「シェアハウスだよ」
「えっ?」
「家を売ろうと思ったが、買い手がなかなか見つからないと思ってな…だから老後の資金を稼ぐためにシェアハウスをすることにしたんだ」
「そ、そう………ねえ、私も住んでいい?」
「ダメだ」
「なんで!?」
「男専用のシェアハウスだからだよ!!」
「そんな固いこと言わないでよ!私も畦倉真知と住みたい!!!!」
「ダメだったらダメだ!!」
なぜなら…
2人は俺に選ばれようと毎夜毎夜、俺を襲いに来るため家の中が騒々しくなるから…なんてことは死んでも言えない。
今夜もまた…
「ヤメッ!イヤッ!…な、なぁ尊、真知、今夜くらいやめないか?俺疲れてて…」
「ダメですよ。どんなに黒田さんが疲れてようが、僕と真知、どっちかを選んでくれるまではやめません。な、真知」
「ああ。さあ、今夜も始めましょう黒田さん」
「そんな…イヤアアア!!!」
(終わり)
『おっさんシェアハウス』に続く…かも?
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