7月●日

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7月●日

高校時代からの親友に結婚相手を紹介したいと言われた美香子は彼氏もいないのに、 「私も紹介したい彼氏がいるの」 と強がった。 そのせいで彼氏になってくれと数日前、俺に頼みに来たのだが尊を見て美香子はすぐ乗り換えた。 「結婚相手に対抗するなら年下男の方が断然いいわ!お金あげるから、仕事だと思って一度だけ私の彼氏になって尊君!」 「お断りします」 「なんで!お金欲しくないの?」 「僕、ゲイなんです」 「えっ…幹一、あんた、やっぱり」 「いやいや、俺はゲイじゃないから」 「ゲイなんて言わなきゃ分かんないんだから、一度だけ私の彼氏になってよ尊君!」 「断ります」 「なんでよ!」 「嘘でも女性と付き合うのは無理なんで」 「そう…」 尊に断られた美香子は、仕方なく俺に彼氏役を頼んで来た。 「もう、あんたでいいわ」 「嘘でも頭を下げろよ!」 そういうわけで仕方なく美香子の彼氏になった俺は、暑苦しいってのに無理やり流行りのスーツを着せられ、 濃い口紅と長い付け睫をつけ着飾った美香子と共に、結婚相手を連れた美香子の親友と食事をした。 「思ってた通り、ハゲて太った優しさしか魅力のない中年男だったわね!」 俺の家に着いた途端、美香子は親友の結婚相手をバカにした。 「素直に祝ってやれよ」 「無理よ!ずっと独身でいようって約束したのに!老人ホームにも一緒に入ろうって!なのに、あの子ったら、いつの間にか彼氏作って挙げ句に結婚まで…許せない!」 「めでたいことじゃないか」 「違う、裏切りよ!」 「お前だって、親友を裏切ろうと思ったことがあるんじゃないのか?親友を出し抜こうと思ったことが」 「…あるわよ」 「結婚は競争じゃないだろ」 「きれいごと言わないで。女は男と違ってタイムリミットがあるのよ!こうなったら私、レズビアンになろうかしら。だったら結婚がゴールにならなくて済むもの」 「美香子さんはレズビアンにはなれませんよ。はい黒田さん、お茶漬け」 「ありがとう」 フランス料理なんて高級なものを食べたせいで、満腹感が味わえず小腹が空いたと嘆くと尊が気を利かせ、お茶漬けを出してくれた。 「何よ尊君、私にはまったく魅力がないっていうの?」 「そうです」 「ちょっと!」 「友達の結婚相手とレズビアンをバカにする人に魅力なんてありませんよ」 「若くてピチピチの尊君に私の気持ちなんて分かんないのよ!」 「分かりたくもありませんよ、そんな気持ち。少しは黒田さんを見習ったらどうですか?」 「な、なんで俺が出てくるんだよ」 「純粋に恋をしてる人は魅力的だから」 照れ臭いことを平然と言える若さも魅力的だな…。
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