6月□日

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6月□日

「僕の妻になる瞳子だ」 隣に住む幼なじみの茂明が紹介してくれた女性は、とても穏やかな笑顔を称える可愛らしい人だった。 茂明は出張が多く、瞳子さんは同居している茂明の母親と二人で過ごしてばかりいた。 そのせいか仕事帰り、庭に出て夜空を見上げる瞳子さんを、俺はよく見かけた。 茂明の母親が俺のお袋に嫁の文句を言っているのを聞いたことがあり、瞳子さんの苦労がうかがい知れた。 だが今じゃ病気で寝たきりになった茂明の母親は気弱になったのか、瞳子さんに頼りきっている。 茂明は出張どころか海外に単身赴任に行ってしまい、瞳子さんはずっと義母と二人きりの生活になってしまっている。 今も時々、夜空を見上げる姿を見るが、海外にいる茂明を思っているのかもしれない。 年齢を重ねても可愛らしさが残る瞳子さんの横顔を見ると、俺は無償に抱きしめたくなる…。 そんなことをしてはダメだと分かっているが、どうしようもなく気持ちが高ぶる。 あの日、茂明に紹介された時、俺は瞳子さんに恋をしてしまった。 一生報われない恋だと分かっているのに諦めきれないのは、茂明がそばにいないせいだ。 手を伸ばせば届く…捕まえて逃げようとしたって押し倒せる…あんな可愛らしい人をほったらかしにできる茂明が憎らしい。 何度、茂明から奪ってしまおうと思ったことか…瞳子さん、俺はあなたを…あなたを…! 「黒田さん」 「…ばっ、ばか野郎!急に入ってくんなよ尊!」 「長風呂だから心配して見に来たら、そういうことですか」 「み、見るなよ!」 「今更、隠してもムダですよ。僕が楽にしてあげましょう」 「楽にって…おい、やめろ!」 素っ裸の俺の肩を掴んで尊が俺を壁に押し付ける。 20歳とは思えないベビーフェイスなくせに、170ちょいの俺の身長より、ちょい低い身長なくせして、なんでこんなに力があるんだよ…。 「お隣の瞳子さんで一人盛り上がってたんでしょう」 「なっ!そんなわけないだろ!瞳子さんは人妻だぞ」 「黒田さんが瞳子さんを見る目、欲望に満ちてますよ。今は、こっちが欲望で、はち切れそうですけど」 俺の股間を見て尊がニヤリと笑う。 女子みたく俺は顔が赤くなっていくのが自分で分かった。 恥ずかし過ぎる…。 「と、年上の男をからかうんじゃねえよ!」 「大声出すと隣の瞳子さんに聞こえますよ」 「おい尊…何する気…アッ!」 俺はイク寸前だったモノを尊に咥えられ、快感の衝撃で身体がのけ反った。 声を必死に押さえたせいで涙がこみ上げて来る。 「尊、もう、やめろ…尊…やめてくれ…たけ…アッ、アッ…!!」 絶頂に達した悦びが声にならないよう俺は自分の手で必死に口を塞いだ。 足の力が抜け、その場にしゃがみ込んだ年上の男を尊は優しく抱きしめ耳元で囁いた。 「瞳子さんへの想いは、これから僕が解消してあげますよ」 「…ありがとう」 俺は年下の尊に感謝した自分が情けなかった…。
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