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7月×日
「古くなったわね、この家も」
久しぶりにやって来た親戚の美香子は少々機嫌が悪いらしい。
日曜だというのに朝早くからやって来てチャイムを鳴らしまくり、夜勤明けで寝ようとしていた俺を起こしておいて、親父が建てた我が家の悪口を言うなんて。
おまけに手で顔を扇ぎながら、暑苦しい!クーラーつけなさいよ!と文句を言い、勝手にクーラーをつけてしまった。
電気代のことを考え、なるべくクーラーはつけないようにしてるってのに…後で電気代請求してやる!
「朝っぱらから不機嫌なヤツだな。美香子お前、いくつになった?そろそろ更年期に」
「不機嫌だからって更年期と結び付けないで!それに私はまだまだ更年期になる年じゃないわよ!私はまだまだ結婚できて子供だって産める年よ!」
「怒鳴るなよ、うるさい」
「寝癖のついた頭をボリボリかくな!大きなあくびをするな!おまけにパジャマ姿のまま出て来るなんて、失礼極まりないったら!あんたこそ、いくつになったのよ!いくら私が親戚だからってパジャマくらい着替えなさいよ。そんなことも出来ないから結婚出来ないのよ!」
「何言ってんだよ。結婚出来ないのはお前もだろ。スタイリストかなんか知らんが、服装にこだわりまくる女相手じゃダメ出しされるかもって男に敬遠されんだよ」
「ダメ出しを嫌がるような、だらしない男はこっちから願い下げよ!」
「黒田さん、なんなんですか一体?朝っぱらから、うるさいですよ」
「ああ悪い」
尊まで起こしちまったか…。
「可愛い!幹一、誰なの?この子」
若い男を前にして美香子は目を輝かしている。
尊だって寝癖のついた頭にパジャマ姿であくびしてるっていうのに…。
「尊だよ。尊、こいつは俺の親戚で」
「黒田美香子っていいます」
「どうも…」
「尊、こいつのことは気にしなくていいから部屋に戻れ」
「ちょっと待って!私は気にするわよ!いいえ気になるわよ!彼に部屋に戻れって、ここに住んでるの?」
「そうだよ」
「黒田さんに拾われたんです僕」
「拾われた?」
「こいつ今、家出中で、泊めてやってるんだ」
「なんで家出なんか?」
「言いたくありません」
「そう言われると気になる…でも、まあ、仕方ないわね。人には言いたくないことがあるもの。で、恋人はいるの?」
「美香子、お前ってヤツは…」
「恋人は…いません」
あれ尊、なんか今、言いよどんだような…。
「ってことは今、フリーなのね?」
「嬉しそうに聞くんじゃねぇよ」
「だって嬉しいんだもん。ねぇ尊君、私と付き合わない?」
「美香子、お前ってヤツは、何を言い出すんだよ!」
「本当は幹一、あんたに頼むつもりだったんだけど、尊君の方が断然いいわ!私の彼氏になって尊君!」
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