傘形連判状-犯人隠し-

1/5
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ーーーというわけで、 傘形連判状は一揆の首謀者が誰か分からなくするのに効果的な書き方なんだ」 お昼休憩が終わった後の歴史の授業は、 どうしてこうも眠くなるんだろう。 純一は耐えきれず、俯いてこっそりとあくびをした。 その直後にツンツンと横からつつかれ、 純一が横を見ると、隣の席の友人・翔が小声で話しかけてきた。 「なあ、純一! 傘形連判状ってさ、寄せ書きみたいで面白くね?」 「面白くないよ、眠い」 「かさがたれんぱんじょう、って響きも語呂良くて覚えやすいし」 「いや墾田永年私財法の一強だろ」 「俺は楽市楽座の響きが好きだわ」 「そこ、二人!」 歴史の授業担当の長尾先生に指され、 純一と翔は慌てて正面を向いた。 「今の先生の話したこと、説明できるか?」 長尾先生に軽く睨まれ、怯む純一とは正反対に 翔はすらすらと説明を始めた。 「えーと、普通の連判状の形式だと 百姓一揆を起こしたメンバーの中で 筆頭者の名前が最初に来るけど、 傘形連判状は紙の中心から放射状にメンバーそれぞれの署名があるから、 貰った側は筆頭者が誰か特定できなくなるんですよね?」 「…そう。その通りだ」 長尾先生はちょっと悔しそうに頷いてみせた。 「なんだ、聴いてたのか。 ーーーじゃあ、今日はここまでにしとこう。 次の6時間目は体育だよな? オマケでちょっと早めに切り上げるから、 グラウンドに遅れないようにしろよー」 長尾先生が言った途端、5時間目終わりのチャイムが鳴る。 全然オマケになってない…。 純一と翔は顔を見合わせて苦笑いしつつ、 男子更衣室へと向かった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!