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こうして寄せ書きに使う色紙を使って
クラスメイト全員の名前と、花瓶を割ったことへの謝罪の文章を書くことになった一同。
色紙を目の前にした女子勢はきゃっきゃっとはしゃぎながら
余白に可愛いイラストやデコレーションを加えて行き、
授業で習った傘形連判状のような殺伐さは
一切そぎ落とされた『傘形謝罪連判状』が完成したのであった。
ーーー帰りのホームルームで、いつもある場所に花瓶がないこと、
そして教卓の上に色紙が置かれていることに気がついた長尾先生。
「これは…」
ーーー読み終わり、顔を上げると
クラスの皆が皆、視線が合わないよう
机に突っ伏している光景が目に飛び込んできた。
「…どうせなら、『先生いつもありがとう』のような寄せ書きをもらいたかったものだがね。
まさか百姓であれば果たし状の意を持つ傘形連判状を生徒から受け取るとはーーー」
奏太はビクッと肩を震わせた。
長尾先生はそれを見逃さなかったが、
ふっと表情を緩めて続けた。
「でも、クラスメイトを庇うために
クラス全員でこの作戦を決行したことには感服したよ。
それに僕が今日教えた授業内容もこれでちゃんと復習できただろうし、
それに免じて花瓶のことは不問にしよう」
ほっと肩をなでおろす奏太。
そして、同様に笑みを見せる生徒達を
長尾先生は可愛らしく思うのだった。
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