3時

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ーゴーンゴーンー  あの微かに聞こえる音は、山の向こう側の廃墟のようにぼろぼろで、壁面が緑色の蔓と葉っぱに覆われて鬱蒼としている石造りのお屋敷の鐘の音だ。  昼間にいったときには、確かにそう、お化け屋敷のような屋敷が私には見えたのだ。  他の誰からもそんな屋敷の存在を聞くことはできなかった。  けれども、夜中の3時の鐘に合わせて足を運べば、そこにはまた美味しいお菓子を準備した人ならざる背丈の老女が、綺麗すぎるお屋敷で待っている。  先日は、マカロンだった。  今度はチーズケーキを振舞ってくれるといっていた。  すべて私の記憶には確かに残っているので、間違いなく存在はしているはずなのだ。
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