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席が隣になってからもほとんどしゃべっていなかったが今日はしゃべらないわけにはいかない。なぜなら2人で日直だからだ。僕は好きな人の話をしているのではない。苦手な人と日直というのはなかなか憂鬱である。
日中はたいして忙しくもなかったので、腰をあげない太田をそのままにして一人で仕事をしていたが、放課後は仕事が多くそうはいかない。ぼくは日直になってから6時間後の午後4時、帰りかけている太田に初めて話しかけた。
「僕掃除するから、花に水をやってくれない?」
太田は腕を組み、うざそうな顔でじっと僕を見た。
「なぜ朕がそんなことをせねばならんのだ」
「ちん?あー…君のことか」僕は自分のことを朕と呼ぶ人間をルイ14世以外に知らなかったので一瞬戸惑った。「日直だからだよ」
「日直だからだと?日直が一番偉いのになぜ働かねばならんのだ?」
「その発想はなかったな、じゃあ仮にそうだとして誰が仕事するのさ?」
「民に任せればよいではないか」
「いいかい?この国は民主制であって絶対王政じゃない。それにこの学校は公立だ。全部自分たちでやらないといけない」
「戯言を」僕はそう言われたとき腹がったというよりもあっけにとられた。この上ない正論を二文字でかたずけられたのだ。
「全然戯れたつもりはないんだけど」
「まあ良い。水やりぐらいやってやろう」太田君は舌打ちをすると手を差し出した。
「ありがとう…」僕は手の意味が分からなかったがとりあえず握手した。だが手を握った瞬間怒鳴って払いのけられた。
「何をしている!愚民が!」
「ごめん、でも僕も意味が分からなくて」
「水を持ってこいと言っておるのだ!」太田君は叫ぶように怒鳴った。
「自分で持って来いよ!」僕は叫び返した。「水を汲んで持ってくるのが面倒くさいんだろ!ここまで持ってきたら自分で水やりするよ!」
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