黄色い傘

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黄色い傘

 6月のある日、小学生の僕は早く家に帰りたくて、下駄箱で靴を履いていた。  帰って宿題が済んだら、大好きなRPGのゲームの続きをやるんだ。  そんなことを考えつつ、靴の踵を踏んだまま外へ出たら、どんよりとした曇り空から、ぽつりぽつりと雨が落ちていた。  今日は一日どんよりした天気が続いていて、朝、母から傘を持っていくように言われていたのに、それを無視して僕は学校へと向かったのだ。  僕はしばらく下駄箱の前で足止めをくらった。  その年の梅雨はよく雨が降って、校庭一面、水たまりでいっぱいになる日が続いていた。  なんで傘を持って来なかったかなー、と思っている僕をよそ目に、他の生徒は傘をさして喜び勇んで下校していた。  僕は一人、その場で佇んでいた。  雨は一向に弱まる気配はなく、むしろ雨脚を強めていた。  途方に暮れて、もう濡れて帰ろうと一歩を踏み出した時、一人の女子生徒が声をかけてきた。
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