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少年の話に少女は
「……さっきは助けてくれてありがとう」
エバは名前も知らない少年にお礼を言ってみる。
ありがとう、なんて言うのは久しぶりだ、なんてことを考えるあたり、今のエバはエバらしくないのであろう。
「え? ま、あれくらいは普通だし」
と少年はすんなりと言った。
そのことにエバはいらつきを覚えつつ、少年に聞いた。
「あなた、名前は?」
「個人情報の保護のため、お伝えできま」
「このわたしにそんなもの通じるの思っているの?」
「(怖い……)」
「もう一度聞くわ。あなた、名前は?」
「アカツキです」
「アカツキ、わたしはエバ。よろしく」
「よろしくお願いしやーす」
「何かうざい。それより、わたしの話を聞いてね」
「強制ですか……」
「何か反論でも?」
「何でもございません」
エバはふぅ、と一息おくと、話し始めた。
「わたしがあの男たちに狙われた理由、わかる?」
「美少女だったかrぐふぉ」
エバはアカツキに軽い右フックをきめると、何事もなかったかのように続けた。
「わたしね、捨て子だったの。で、拾ったのが反財閥組織の元リーダー。だから、あの男たちは財閥側の人間。逆らったあなたも、狙われる」
「まじっすか」
「まじよ。少しの間は都市部には戻らない方がいいかもね」
「エンネル以外全部家にあるんだけど……」
「少なくともほとぼりが冷めるまで諦めなさい」
「がーん」
「そんな言葉口に出す人間初めてみたわ」
「じゃあ、俺どうすればいいの?」
「わたしについてきなさい」
「え?」
「少しなら、一緒に逃げてあげるわよ」
「……! あざーす!」
「あなた野球部なの?」
「合気道はやってるけど、何で?」
「……何でもないわ」
エバは溜め息をついた。
話に区切りがついたのを境に、エバはアカツキと共に地下室へ降りていった。
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