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少年は知る者逃げる者
先生に呼び出されたような感じがして思わず従ってしまったが、改めて考えたら結構危ない状況かもしれない、とアカツキは考えた。
あんなに自然にナイフを手にするような人生をこの少女は送ってきたのだろう。
アカツキは自分よりもかなり小さい相手に不覚にも怯えてしまった。
確かにアカツキは合気道を習ったりもしているが、おそらく、いや確実に経験に差がある。
アカツキは人ひとり分くらいの間を空けて座る少女をもう一度眺めた。
膝くらいまでの長さの白いワンピースと、透けるように白い肌。自分も肌は白い方だと思っていたが、この少女は別格だといえる。
そして何より、不思議な髪型をしている。
この少女の年齢には合わない白銀の長髪を一房だけ、左耳の上に青いリボンでくるんと輪っかにしている。
長い睫毛にくるまれた蒼い眼は、この少女にしてみれば失礼なのだろうが、どことなく自分と似ていた。
そう、眼の色が似ていると言うのも憚られるほど、この少女はいわゆる絶世の美少女だった。
と、少女はいきなりこちらを睨むと、
「何じろじろ見てるんですか?」
低い声音でそう言った。
「い、いや、別に何でもな」
「まあそれはともかく、」
少女はアカツキの言葉を遮ると、
「どうしてこの本にそんなに興味があるんですか?」
と聞いた。
アカツキはその質問に少々戸惑いながらも答える。
「うーんと、実は俺、捨て子で、俺が捨てられていることを養父母が知ったのが、<図書館>ってアカウントからの情報だったんだって……説明下手だけど、わかるかな……?」
「それと、実物の図書館がどう関係するんですか?」
「その<図書館>って言うアカウントには、俺の情報と一枚の写真しか本物の情報がなかったんだ」
「その写真が、図書館を写したものだった、と?」
「そうそう」
「では……!!」
少女は何かを話そうとしたが、急に廃墟の外を見回した。
「大変です、あなたは地下室に入ってください」
少女はアカツキに何の説明も無いまま、何の変哲もないように見えた床を指す。
「……?」
「あ、そうでしたね」
アカツキの不思議そうな顔を見て、何か納得したのか、壁のタイルの一部を押す。
すると。
特に何の音もせず、床の一部が開いた。
少女の言った地下室につながるのであろう階段が続いている。
アカツキは少女に従い地下室へと入っていった。
どたどたどた。
たくさんの、おそらく大人であろう足音が響く。
少女と大人たちは会話しているらしいが、よく聞こえなかった。
少しすると、また足音が聞こえる。
そして。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
叫び声が聞こえる。
アカツキは一目散に階段を駆け上がり入り口を開く。
目の前には、エバを縛り上げようとする白い覆面の男たち。
アカツキは迷わず近くにいた男を掴み、首をしめる真似をした。
「この男を殺されたくなかったら、その女を離せ」
男たちは勿論、少女も驚いた。
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