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バケモノの一言
百均傘を玄関に置くと、話し声が聞こえた気がした。
いや、空耳だろう。そう思って靴を脱ぐと泥がはねた。
「うわ…きたねえ!」
間違いなく傘から聞こえてきた言葉だ。じっと覗き込むと傘は言った。
「ばれちまったら仕方ねえ。オラは唐傘お化けだ。気味が悪ければさっさとゴミ捨て場にでも捨てやがれ!」
僕は言葉を返した。
『僕はツイてるな。お前さんが玄関に居れば、泥棒やセールスマンも驚いて逃げていくだろう』
「この声、アンタにしか聞こえねえから」
『それなら…』
僕が笑うと唐傘は不機嫌そうに言った。
「わかったぞ。さては好きな女の子に持たせて、秘密でも探ろうとか考えてるんだろ。このスケベ!」
『惜しい! ムカつく女上司に持たせて弱みを握る』
「てめえの方がよっぽど化け物だな。もう少しマシな奴の厄介になるぜ」
そう吐き捨てて唐傘お化けは出ていった。
『甘いな。このご時世…悪魔ほど、まっとうな人間の皮を被ってるもんさ』
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