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デジタル時計の世界での3時は、午前3時のみ。そして、おやつを食べていいのも、午前3時のみ。 そんな馬鹿げた制度、おやつなんて子供くらいしか気にしないし、特に差し支えなんてないだろうと、思うかもしれない。 だけど! 甘いもの好きの僕にとっては、かなり死活問題で…。 まず、僕のいる職場では、ミーティングと称して、3時にお茶の時間が30分程あった。そしてその時間には、誰かしらからの差し入れの、美味しいお菓子が出されることが多かった。 普段、自分で買う事の無いような、おしゃれな美味しいお菓子たち… 僕は、それを食べられるこの至福の時が、楽しみで仕方なかったのに。 それなのに その至福の時を突然に奪われてしまった… 『15時のミーティングの時に、おやつは食べられないけど、お昼の食後のデザートに食べればいいじゃない』 優しいヒカリ先輩はそう言うけれど、そこそこお腹が満腹で食べるお菓子と、少しお疲れで小腹が減った午後3時に食べるお菓子では、全く至福度が違うのだ。 そんな事を考えていて、僕の頭にふと疑問が浮かんだ。 カフェなどのケーキセットはどうするんだ?そして甘味処とかは? 僕はお昼休みに、ヒカリ先輩とランチしながら、浮かんだ疑問をぶつけてみた。 「ケーキセット?あれは食後のデザートで頼むものよ。甘味処は、3時から1時間営業してるから、食べたくなったら行けばいいじゃない。どうしたの?一橋くん、一昨日も駅前の甘味処行ってきたって、昨日嬉しそうに言ってたじゃない」 ヒカリ先輩は「変なの」と、小さく笑って、食後のデザートのケーキセットを選び始めた。 「ヒカリ先輩、食後にケーキセットは重くないですか?」 「ホントに今日の一橋くん変だよ?いつも食後に、ケーキ2つは食べるくせに」 困った表情を浮かべて、ヒカリ先輩はチーズケーキセットを注文した。 おかしい… 僕には全くそんな記憶はないし、おやつは3時に制度も知らないし、デジタル時計しかない世界でもなかった。 じゃあもしかして、変わったのは世界ではなく、僕自身なのか?例えば、この世界の僕が、今の僕と入れ替わった、とか? まさか、ね… 一番良い解決策は、 目覚めたら夢でした というオチだけど、今夜寝て明日の朝目覚めた時に、そうなっているといいな…。 そう思いながら、僕は目の前に運ばれてきた、イチゴのタルトを頬張った。 この世界でも、ここのイチゴのタルトは、変わらず絶品だった。
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