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夜中の3時の甘味処は、最高に美味しいスイーツを食べられ、幸せではあるけれど…。
わざわざ夜中に起きなければならない事、食べてから家に帰り、数時間寝てまた起きて仕事へと向かう事、それはおやつの時間の幸せを上回る苦痛だった。
それに健康上よろしくない。
たった2週間、あの甘味処に通い続けたら、びっくりするほど体重が増えて、そして、目の下には常にくまが出来た。肌も荒れて、ニキビも出来始めた。
これはまずいと思って、甘味処へ行くのを週2に抑えたら、今度はストレスで蕁麻疹が出てきてしまった。
なんて事だ!
このままでは、僕はこの世界で生きていけないどころか、まるで命を落とす勢いじゃないか。
そこで僕は、お昼休みに『食後のデザート』として、色々な人から頂くお菓子の数々を、15時のお茶の時間に、トイレの個室など、絶対に人に見つからないような場所で、こっそりと食べる事にした。
そう、至福のひとときを復活させたのだ。
人に隠れてという緊張感と、こっそり食べれた達成感と、そして場所はともかく、本来のおやつの時間に美味しいお菓子を、ほんの少し食べられる幸せが、僕の全てを満たしてくれた。
この行為が、この世界では逮捕されるようなものと分かっていても、どこかでこんな事位で捕まるはずがない。この時の僕はそんな風に思っていた。
そんな油断もあって、僕はその日、非常階段の踊り場で、ヒカリ先輩から頂いたフロランタンを頬張っていた。
別にトイレの個室じゃなくても、見つかる事も、見つかって逮捕までされる事もないだろう。
それにしても、ヒカリ先輩の持ってくるお菓子は、本当にいつも美味しい。これで美味しい紅茶でもあれば最高なのに…
もぐもぐと味わっていると、背後の扉が突然大きく開かれた。
えっ?
「一橋 智、おやつ法違反の現行犯で逮捕する!」
け、警察?!刑事!?
逮捕ー!!!
僕は咄嗟に階段を駆け下りた。逃げたところで逃げ切れるとは思えなかったけど、とにかく必死に逃げた。
夜中の3時以外に、ほんの少しお菓子を食べただけで、そう!お菓子を食べただけで逮捕なんかされてたまるもんかっ!
僕は走って走って、足がもつれて転びそうになっても走り続けた。
だけれども、最後には追ってきた刑事に取り押さえられ、僕はおやつ法違反で逮捕されてしまった。
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