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辞めてしまった。
その言葉が僕の頭の中を反芻して、離れなかった。
やはりもっと早く連絡先を聞いていれば。
もっと早く、声を掛けていれば。
時間は決して無限ではなかったのだから。
……そんな事を今さら猛省したところで、彼女がここの喫茶店を辞めたという事実は変わらない。
ーーーでも、何故だろう…。
僕は何故か、また彼女に逢えるのではないかという思いが自分の中にある事に気付いた。
バッタリ道で出逢って、今度こそ…声を掛ける未来が…僕には見えた。
だから僕の片想いはこんなところでは終わらない。
絶対に彼女ともう一度出逢って、あの笑顔を自分のものだけにする、そんな期待を抱きながらコーヒーを啜り、僕は立ち上がった。
「ご馳走様でした。」
昼下がりの午後…扉を開けた先には清々しいほどの青空が広がっていた。
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