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「約束と違うよトラ。私は何ともないし、もうやめよう?」
「もしも一寸の狂いがあってショウキに怪我をさせられていたら、死んでいたかもしれないんだよ?」
「トラは人の行動を監視しすぎだよ」
「監視ではなく見守っているだけだよ」
「そういうことじゃなくて」
ショウキもトラにビンタされるかもと独り言を呟いていたし、監視されていることは承知済みなのかもしれない。これでは自由に動けない気がする。トラの矛先が今度はマオに向けられた。
「マオの羽は立派だと何度も言わなかったか?」
「トラ様は俺が高い所が苦手なの知ってるくせに」
「知ってるよ。でも、今日は飛ばなきゃならなかったと思うんだけど、マオはどう思った?」
「飛べないもんは飛べない!」
力任せに言葉を発するとそのまま食堂を出て行ってしまった。申し訳なさそうにバァバが口を開く。
「トラ様、いくらなんでも言い過ぎじゃないですか?」
「俺が悪いのはわかっているよ。飛べるということがどれほど素晴らしいことか知ってもらいたいだけなのに、うまくいかないね」
トラが心を痛めながら言っていることがわかり瑠奈の身体は自然とマオの後を追っていた。飛べるのに飛べない理由がある。それを選んでいるマオの気持ちを知りたい一心で廊下を走った。
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