プロローグ

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プロローグ

「朝だよ瑠奈(るな)。目覚めのキスは必要か?」 「必要ありません!」  ニートだった瑠奈は現在とあるアパートの管理人として日々奮闘している。雇い主は神様。住人は人間嫌いのあやかし達。どう考えても違和感だらけの就職先である。 「つれないね」 「女の子の部屋に勝手に入るのはよくないって言ってるでしょ?」 「いずれ結婚するのだから何も問題ないだろ」 「おおありです!」  何故か神様に気に入られ花嫁見習いとして管理人をしているけれど、前の管理人が復帰するまでの期間限定のつもりだ。そもそも人間と神様が結婚なんて聞いたことがない。 「私、玄関や庭園のお掃除があるので」 「何か困ったことがあったら俺に言うように」 「ありがとう」 「礼ならキスの方が……」 「しません!」  高らかに笑う神様ことトラは、シワひとつない着物の襟を正して部屋を出ていった。契約をしてしまった以上、仕事放棄をするわけにはいかない。 「よし、今日も頑張ろう!」  瑠奈の管理人業務はまだ始まったばかりだ。住人に振り回される日々は終わらない。 ――そう。全ての元凶は、あの神社からだった。
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