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「そんな神社に身銭なしで願いに来るお前も、十分変わり者だと思うけど?」
「ここの神様はきっと寂しがってるから」
「どういう意味だ?」
「誰もお願いしに来ないから人間不信になってるかも」
「面白いことを言うな」
「お願いなんてどうせ叶えてもらえないし、お賽銭の無駄かなって」
そう言うと、彼は肩を大きく揺らしながら笑い始めた。いい人なのか悪い人なのか分からない。
「そんなに笑わなくても」
「アハハ、すまない」
目尻に溜まる涙を指先で拭う姿も美しい。見惚れている瑠奈の頭は優しく撫でられる。
「寂しい者同士、気が合うんじゃないか?」
「神様と?」
「ああ」
「どうかな。神様がいたら私の両親は死なずに済んだと思うし」
この神社の神様を悪く言うつもりはないけれど、どうやったって拭いきれない心の傷。手術をしても包帯を巻いても意味がない。神頼みをしている自分に驚いているくらいだ。
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