見え始めた心の傷

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「トイレ?」 「ちっげーよ、鈍感女!」 「はいはい、鈍感女でも人間女でも好きに……」 「ありがとう、瑠奈姉ちゃん」  聞き間違えたかと思い瞬きを繰り返すけれど、マオの顔は真っ赤でそれが移ったかのように瑠奈も顔を赤くする。 「え、今なんて言ったの?」 「今日はもう言わない!」  背中を向けるマオの代わりにイロハとルキが「瑠奈姉ちゃんって言った!」と後ろ指を差しながら笑っている。それに反応するマオは逃げる二人を追いかけ回すのだ。 「アイツ等を手懐ける瑠奈ちゃん凄いよ」 「手懐けたわけでは」 「今日のトラ様は上機嫌に帰宅するだろうね」  高らかに笑いながらショウキは遅めの出勤をするのである。  いつもより心が軽い一日。ショウキの言う通り事の次第を全て把握しているトラは上機嫌で帰宅した。相変わらず双子とクレハは口を尖らせていたけれど、バァバとナギトとはいつもより視線が絡む回数が多かったように思う。駆け出しの管理人業はようやく板につき始めたのかもしれない。
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