神様に求婚されました

12/31
前へ
/325ページ
次へ
「ご両親のことも、仕事で失敗したことも全部知っていたよ」 「え?」 「お前の人生を調べることくらい朝飯前だからね」  ぶるっと身体が震えた。漆黒の瞳は穢れを知らないくらいに澄んでいて、嘘を言っているようには見えなかったから。 「そういうの、ストーカーっていうんだよ」 「毎日顔を合わせていたら気になるものだよ」 「さっきも言ってたね。私は今日初めてあなたと顔を合わせたんだけど」 「俺は(とら)(すけ)、みんなにはトラと呼ばれている」  何を言うかと思えば自己紹介。誰も開示を頼んでいないのにトラはそのまま話を続けた。 「これでもアパートのオーナーをやっている」 「アパート?」 「でも、管理人が産休に入って人手不足なんだ」  管理人ってホテルのコンシェルジュと似たようなものかな。だとしたら務まる仕事かもしれない。トラの言っていることは嘘ではなさそうだし、上からな部分はあっても根は優しい人な気がする。
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2670人が本棚に入れています
本棚に追加