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「ご両親のことも、仕事で失敗したことも全部知っていたよ」
「え?」
「お前の人生を調べることくらい朝飯前だからね」
ぶるっと身体が震えた。漆黒の瞳は穢れを知らないくらいに澄んでいて、嘘を言っているようには見えなかったから。
「そういうの、ストーカーっていうんだよ」
「毎日顔を合わせていたら気になるものだよ」
「さっきも言ってたね。私は今日初めてあなたと顔を合わせたんだけど」
「俺は虎ノ助、みんなにはトラと呼ばれている」
何を言うかと思えば自己紹介。誰も開示を頼んでいないのにトラはそのまま話を続けた。
「これでもアパートのオーナーをやっている」
「アパート?」
「でも、管理人が産休に入って人手不足なんだ」
管理人ってホテルのコンシェルジュと似たようなものかな。だとしたら務まる仕事かもしれない。トラの言っていることは嘘ではなさそうだし、上からな部分はあっても根は優しい人な気がする。
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