神様に求婚されました

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「それにしてもトラ様、この人間は煩悩が少なすぎますね」  会話の腰を折るようにして源さんが割り込んできた。瑠奈が積み上げた石をひとつひとつ手に取りながら首を傾げている。 「そんなにか?」 「それなりにはありますけど、こんなに軽い石は初めてです」  煩悩が少ないとはどういう意味なのだろう。皆目検討もつかない会話に首を傾げる。 「どういう意味?」 「瑠奈が積み上げた三つの石には三毒(さんどく)の意味があってね」 「三毒?」 「簡単に言うと煩悩のことだよ。アパートの住人は人間の煩悩を特に嫌っていてね」 「あやかしは純粋ってこと?」 「というよりも繊細かな。源の仕事は、煩悩に蝕まれた者をアパートに近づけさせないことだよ」  どうやら石に触れた時点で煩悩が投影されるらしい。つまりは欲まみれの者は排除するという意味だろうか。 「石を一発で積み上げられた瑠奈は凄いんだよ」 「どうして?」 「石の重さや形は煩悩に比例する。普通の人間であれば積み重ねられないようになっているんだ」  煩悩は自分では気づかないうちに膨れ上がっている。石の重さや形状が違えば積み重ねることは困難だ。それを迷いもなく一発でやってみせたということは、煩悩に蝕まれていないという意味になるらしい。
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