神様に求婚されました

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「怖いか?」 「少し」 「落ちたりしないから大丈夫だよ。着いたら教えてあげるから目を瞑っていなさい」  神様なのに温かくて優しい手。そういえば、小さい頃も近所の子と手を繋いで冒険ごっこをしていたっけ。両親が亡くなった後、二つ隣の町に引っ越してしまったから冒険ごっこをする相手どころか交友関係はほとんどなくなり孤立した人生を歩んできた。 「誰かに優しくされるの、久々かも」 「今まで孤独でいた分、瑠奈は誰かを頼るべきじゃないかな」  その言葉に頷きを見せる代わりに瞼を閉じゆっくりと足を進ませていく。真っ暗なのに安心できるのはトラの手が温かいかもしれない。事故後、冷たくなってしまっていた両親の手とは全然違う。  遮られた視界の中で研ぎ澄まされる聴覚は余計な音を拾わない。聞こえるのは期待と不安が織り混ざって高鳴る鼓動音。  そして―― 「着いたよ瑠奈。目を開けてごらん」  入り込んできた光に眩みもう一度瞼を閉じる。そこから再び瞼を開き視界を慣らしていけば、景色は一変。 「わぁ!」 「ようこそ、瑠奈」  視界一面に広がるのは竹林。色鮮やかな広緑に囲まれ、肌に触れる風も心地いい。息を吸い込めば澄んだ空気が穢れを払ってくれるような気分になった。そして、足元には祠の脇にあった線路の落書きと源さんが転がした石がある。
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