神様に求婚されました

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「この子達は、よく神社で遊んでいてね」 「だから私を知っているのね」 「ああ。ここ数十年、人間があの神社へ足を踏み入れることはなかったから皆が警戒していたんだ」 「ご、ごめんなさい。怖がらせてしまって」  何も考えずにお賽銭なしで願い事をしていたことを今になって後悔し始める。神社は人間だけのものではないのだから、身勝手過ぎる言動を反省する以外なかった。 「いつも身銭なしでやってきて、どうでもいい願いを言う人間がいると報告を受けてね」 「うっ」 「でも、帰る間際はいつも人知れず泣いているという報告も」 「っ、泣いてなんかないです」  突っぱねるようにして顔を背けたけれど、トラが確認を怠るはずがない。皆を守るためにどのような人物であるか、自分の目で確かめるはずだから。 「ごめんなさい。嘘をつきました」 「うん。きちんと謝れて偉いね」  褒めるように撫でられる髪。調子が狂わされてばかりの瑠奈は静かになる。  願い事をしても気分が晴れることはない。家に帰っても出迎えてくれる人もいなければ部屋の明かりさえ灯らない。孤独になるのが怖かった。それが帰り際の涙の意味だ。
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