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「人間の女のくせにトラ様にキ、キスしてもらうなんて羨ましい!」
「え、そっち?」
「お前なんて嫌いだ!」
仲良く三人揃って舌を出しアパートへ駆けていく。嵐のように去る小さな背中に瞬きを繰り返すことしか出来ない。
「匂いが消えるよう意識的に瑠奈に触っていたつもりだったけど、そう簡単には消せないか」
ボディタッチの多い理由がそれだと知って何故だか傷つく心。油断をして気を許すと、こういうことになるのだから気をつけなければ。
「ねぇトラ、やっぱり人間の私なんかがここで働くのは」
「あの子達の言っていた通り、普通の人間であればここへは来られないよ」
「え?」
「もし来られたとしても、腐敗した魚のように人間臭が一気に充満して住人が血相を変えて飛んでくるはずだ」
「うん?」
「皆はそれをしない。つまり、瑠奈はそこまで警戒されていないということだよ」
安心しなさい、と撫でられる手は優しさのみで出来ている。
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