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「もう一人離れにいるの?」
「嫉妬かな?」
「怒るよ」
「怒った瑠奈も見てみたいな」
ため息が自然に出てきてしまう瑠奈に言い返す元気はない。じっと見つめる瑠奈にトラは少し間を置いてから答える。
「仮の住人とだけ言っておくよ」
バツが悪そうに後ろ髪を掻くトラはそのまま言葉を続けた。
「俺が離れなのは帰りが遅くなる時もあるからだよ。皆を起こしてしまわないようにね」
「ほんとにそれだけ?」
「はは、さすが瑠奈だね」
「気を遣わなくてもいいのに」
「これでも一応神様だから。俺がひとつ屋根の下にいたら皆緊張して休めないだろうしね」
神様だからといって傲慢にならないところは好感が持てる。きちんと休めているのだろうか。
「心配いらないよ」
「もう、また心を読んだの?」
「聞こえてしまっただけだよ」
「嘘つき」
それにしても、ここの管理は大変そうだ。人間嫌いの住人が人間の管理人を受け入れてくれるとは思えず、悲嘆するかのように再びため息が漏れる。
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