あやかしは人間が嫌いらしい

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「片付けは後にして、まずは夕食にしようか」 「あ、もうそんな時間。源さんの所に戻ってコンビニに行ってくるね」 「その必要はないよ。皆揃って夕刻六時に着席する決まりになっているから、瑠奈もおいで」  そういえば、先ほどからお肉の芳しい香りが鼻腔をくすぐっている。腹時計も騒がしくなるわけだ。 「私も一緒に大丈夫?」 「それがここのルールだから。従わない者は追い出すよ」  清々しい笑顔に身震いした。時折見せる表情はたまに怖い時がある。  管理人室を背にして右の道を真っ直ぐ進んだ所に食堂はあった。扉の向こうからは楽しそうな声。ご飯が食卓に並べられる前のわくわく感を思い出した。孤食に慣れていたから余計にそう思うのかもしれない。 「皆、待たせてすまない」 「トラ様!」  扉を開けてトラが姿を見せると笑顔で出迎える住人たち。  続いて瑠奈が食堂に一歩足を踏み入れるなり殺意に満ちた視線が集中したのは言うまでもない。そして、野次が飛んでくる。 「人間が何の用だ!」  箸で応戦しようとするのはマオ達だ。この視線もこの態度も、早いものでもう慣れてしまった瑠奈は愛想笑いで返す。何を言っても信頼を得ていない以上意味がないからである。
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