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「そこはいつも空席だよ」
「また心を読んだの?」
「その住人には俺も手を焼いていてね」
「無視ですか」
結局促されるままトラの隣席に座らされてしまった。恐らく先ほど言っていた"仮の住人"のことなのだろう。
人数分の食事が用意されたダイニングテーブルはとても華やかだ。
「これ、私の分?」
「そうだよ。瑠奈をここへ招くと昨晩バァバに話しておいたからね」
バァバに視線を送ると勢いよく外されてしまった。料理を用意したのは歓迎してくれたわけではなくトラに頼まれたからにすぎない。むしろこれを食べたら出ていけというオーラがひしひしと伝わってくる。
「今日のメニューは豚肉の香草焼きと野菜の酢作りだよ」
バァバが献立を説明し始めるとショウキが頬杖をついて憎たらしく口を開いた。
「よっ、バァバは共食いがお好き」
「文句を言うショウキにはタバスコを添えなきゃかい?」
「うわー、バァバが作った豚肉うまそう!」
「白々しい男だよ、まったく」
これはいつもの流れなのだろう。皆我関せずで目の前に並べられた食事を見つめていた。
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