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「私、急いでるのでお先に失礼します」
「待て」
「は、離して!」
「暴れるな」
「っ……」
すれ違う寸前に掴まれる右腕。力任せに引き寄せられると二人の距離はグッと縮まった。至近距離で見る彼は端正な顔立ちをしていて、思わず息を呑む。男のくせに肌は透き通っているし髪も艶やかで美しい。
「近くで見ると可愛い顔をしているな」
「へ!?」
イケメンに容姿を褒められてつい顔を赤らめてしまった。色恋沙汰のない瑠奈にとっては当然の反応だ。
「そういう反応も悪くない」
「な、なんなんですか?」
夢にしては掴まれている腕に感覚はあるし、鼓動も忙しなく動いている。息苦しいのはイケメンと至近距離で言葉を交えているからかもしれない。そう思う瑠奈に彼は言葉をかける。
「身銭なしで毎日願いを乞う度胸は褒めてやらなくもない」
「うわ、ひょっとして私のストーカー?」
「ストーカー?」
「いいでしょ別に。ここの神様はどうせ叶えてくれないし」
「ほう」
そこでやっと掴まれていた腕が解放された。穢れを払うように左手で払っていると、その大きな手は瑠奈の頭に優しく乗せられたのだ。まるで、親が子どもを慰めるかのように優しく。
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