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花の形をした陶器皿には少し焦げ目のついた豚肉の香草焼きが盛られている。クレソンが飾り付けられているのが何ともお洒落だ。透明の小鉢にはきゅうりと人参の酢の物、オニオンスープにライスといった盛り沢山のメニューだ。
「わぁ、美味しそう」
「バァバの料理はうまいに決まってんだろ人間め」
トラの右隣に座っているマオがやたらと突っかかってくる。子ども相手にイライラすることはないけれど、人間であることが苦しいと初めて思った。結局どこへ行っても居場所は作れないのかもしれない。両親がいた頃に戻れたら……。
「やめないかマオ」
「トラ様は人間に甘いんだよ。参拝者がいなくなったせいでトラ様も体調崩してばかりじゃな……」
「お喋りが過ぎるぞ」
マオの口元を左手で覆うトラの威圧的な態度に圧倒される住人たち。小刻みに頭を縦に振るマオの口元から静かにトラの手が離される。
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