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「やめないか、ミレイナ」
「えー。ナギトさんが言うならやめる」
不服そうに姿勢を正すと凍っていたはずのテーブルは元通りになり寒さも引けていく。きっとミレイナとエレミィは絵本に出てくる雪女に違いない。バァバの手料理はまだ温かく湯気が立っているのに対し、二人の料理だけは霜が降りている。
「皆さんは人間が嫌いなんですか?」
「人間なんて大嫌い。だから貴女も嫌い。このアパートはトラ様がご厚意で建ててくださったの。また人間なんかに居場所を奪われたくないわ」
クレハが鋭い瞳で言い放つ。また、とはどういう意味なのだろ。どうしてと問う前に双子が喋り始める。
「ほんと人間って甲斐性なし。誰のおかげで願いが叶ってると思ってんだか」
「願いが叶わなかったら文句言うしね。身の丈に合わないお願いだって気づけって感じ」
まるで願いを叶えてやっているというような口振りだ。昔は虎ノ崎神社にはたくさんの参拝者で溢れていたし、トラも願いを叶えるのに苦労をしていて愚痴を溢していたのかもしれない。
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