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「いくら恩を返すと言っても、人間嫌いな彼等が俺の条件に二つ返事をするはずがないんだ」
「それって、もう一度人間と歩み寄りたいってこと?」
「きっと心の奥底ではね。彼等も人間が嫌いだと意固地になってしまっていて引くに引けないんだと思う。ごめんな、辛い思いをさせて」
トラの深い優しさも恐らく傷つけられてきたからこそなのだと思う。賑わいを見せていた神社に参拝者は訪れなくなり誰からも必要とされなくなった神様。まるで自分のようだと重ねてしまう瑠奈は深呼吸をひとつした。
「難しいことは分からないけど、トラは皆に愛されてるよ」
「どうしてそう思うんだ?」
「いくら歩み寄りたいと思ってても、嫌な思いをさせられた人間のために何かしてやろうと思わないから」
「そういうものか?」
「皆はトラを信頼してるから力になろうって思うんじゃないかな」
人間嫌いが直っていないのは食堂での出来事で承知済みだ。先は長いなと覚悟をする瑠奈は胸の前で両腕を組んで頷きを見せる。
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