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「私に居場所なんてないと思ってたけど、トラは私を必要としてくれる」
「うん?」
「だからトラは今の私にとって必要なの。私の居場所なの。わかった?」
つまんでいた指先を離すと同時にトラがそれを包み込む。そして、そのまま指先にキスをひとつ落とすのだ。
「なっ!?」
「ありがとう瑠奈。俺にも瑠奈は必要だし、瑠奈は俺の居場所だよ。今までも、これからもずっとね」
「今までもって、私があの神社に参拝始めてまだ一ヶ月くらいなのに変なの」
「誰かを大切に想うのに時間差はあるものだよ。俺の場合は少し早かったというだけ」
確かに一目惚れで交際したり、交際してみてから好きになる場合もある。大切な人を作ることを避け過ぎてその気持ちをうまく思い出せない。
「さて、瑠奈もそろそろ部屋に戻りなさい。簡単なものだけど、着替えなどは用意してあるから今晩はそれで過ごすといい」
「わかった。ありがとう」
夜風がそよぎ髪を揺らす。見上げれば夜空に瞬く星が歓迎してくれているかのように瞬いている。その輝きを脳裏に焼き付けて瑠奈は部屋へと戻り翌日に備えるのであった。
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