見え始めた心の傷

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「喧嘩っぱやいところも好きだよ」 「もー!」 「朝食の準備も直にできるから着替えたら出ておいで。一緒に食堂まで行こう」  それだけ言うとトラは部屋を出ていった。食堂という単語だけ身震いする瑠奈は、ため息を何度か漏らしながら着替えを済ませトラと共に食堂へと向かうこととなる。  食堂に到着すてからの流れは昨晩と変わりない。トラへの挨拶は爽やかに、瑠奈への挨拶は殺意を込めて―― 「人間のくせに、まだいやがる」  何かと突っかかってくるマオは今日も皮肉を込めて話しかけてきた。嫌なら関わらなければいいのにと思いつつ爽やかに挨拶をする瑠奈も相当堅物である。 「おはようございます。人間の瑠奈です、瑠奈」 「瑠奈ちゃん強いねー」 「ショウキさん、おはようございます」 「さん付け不要。敬語も取って」  言葉の最後に大きなあくびをすると、ショウキは虹色の羽を折り畳みながら椅子に腰かけた。住人の中では唯一理解を示してくれている。
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