見え始めた心の傷

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「あーあ、ナギトさんとの爽やかな朝が台無し」 「ミレイナに一票」  双子は相変わらず嫌いオーラ全開。ナギトとクレハは無言のまま視線すら合わさない。 「タダで願いを叶えてもらおうとする瑠奈とかいう人間なんてどっか行っちゃえ」 「そうだそうだ!」  イロハに便乗するようにルキが声をあげる。朝から何とも明るい住人たちである。すると、奥から中華鍋をお玉で叩きながらバァバがやってきた。 「静かにしな! トラ様に怒られたいのかい?」 「私は怒られてもいいけど」  クールに返したクレハに「ドMかよ」よ突っ込んだのはショウキだ。その瞬間、クレハの右肘がショウキの鳩尾(みぞおち)にヒットする。 「(いて)ぇなクレハ!」 「サナギからやり直したら?」 「はー?」  埒の明かないやり取りを一蹴するのもまたトラである。両手を二回叩き皆の意識を集中させた。
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