見え始めた心の傷

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 降り続けている雨は傘に何度も弾いてやむ気配はない。見つけた場所は庭園。水の枯れた池をじっと眺めているマオの背中はとても小さく思えた。 「風邪ひいちゃうよ?」  濡れないように傘を出すと雨音に混じって小さな舌打ちが聞こえてくる。一瞬視線が絡まったけれど、それは直ぐに外されてしまう。 「飛ばないカッコウだって笑いに来たのかよ」 「そうじゃないよ」 「お前が来てから嫌なことばっかだ」 「ごめんなさい」  何と声を掛けていいかわからず沈黙を続けていると、先にマオが口を開いた。 「カッコウってずる賢くて残忍なんだってさ」  再び向けられた視線はとても弱々しい。そういえばカッコウは違う鳥の巣に托卵(たくらん)する生き物だと聞いたことがある。他の雛が孵化する前に背中で卵を巣から落とすという習性からそう言われている。
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