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 太一を避けるように部活の欠席届を顧問の森先生に出しに行く。 昨日の熱が下がりきっていないことにして休むことにした。 「なんだお前も休みか。日野も具合がすぐれないからって今日は早退したらしいぞ。」 一瞬聞きなれない名字を頭で反芻する。 日野…。 太一か。 もしかして俺の風邪をうつしてしまったのかもしれない。 「先生!太一の家の住所教えてください!」 前のめりになって聞くが先生が生徒の個人情報を簡単に教えてくれるはずもなく職員室から追い出された。  会いたくないなどと思っていたが、昨日お見舞いに来てくれたのだから先輩の俺がお返しにお見舞いに行くのが普通だろう。 しかし住所が分からないのであればお見舞いも何もない。 顔を合わせづらいなんて考えは既に無くなっていた。 できればあいつが来た時みたいに急に行って驚かせてやりたい。 結局考えがまとまらないまま下駄箱で外履きに履き替えた。 運動部が声を出しながら走っている。 横目で見ながらトボトボ歩いているとユニフォーム姿の駿を見つける。 なんとなく目が合った気がして手を振る。 休憩中なのか走り寄ってくる駿。 申し訳なく思いながらも「お疲れ」と声をかける。 さすがに知らないだろうと思いながらも太一の住所を聞いてみる。 少し考えるようにしたあと「少し待ってて」といって陸上部の輪の中に入っていった。 あの中に駿の好きな子もいるのかぁ。 ハーフパンツからすらりと覗く足は誰のものも綺麗だった。 筋肉質で細いとは言い難いが努力の結果なのだろうと思うと羨ましくも感じた。  思ったよりも早く戻ってきた駿は一枚の紙切れを握っていた。 「後輩ちゃんと同中の奴が住所知ってた。」 感謝を伝えると駿は手をあげて部活へと戻っていった。  いつもの最寄りの駅まで行き、進行方向の違う電車を待つ。 太一の降りる駅の話はなんとなく聞いたような気もするがあまり記憶にない。 いつもと違うホームにいるのは不思議な気がした。 太一からはこうやって見えてたんだ…。 なんとなくいつも笑顔で手を振る太一の姿を思い出す。 あいつは周りを気にしなさすぎる。 手を振られている俺の方が恥ずかしい。 そんなことを思い返してはにやける口を手で隠した。  初めて降りる駅は新鮮だった。 周りには見たこともないお店が立ち並ぶ。 スマホのナビともらった地図を見比べながら進んでいく。 店が並んでいた通りを抜けると一気に住宅街に入る。 教えてもらった住所に近づくと一軒一軒表札を確認していく。  『日野』 見つけた時には本当に見つかったと少し感動した。 インターホンを押そうとして止まる。 もしかしたら親がいるかもしれないんだよな。 誰かの家にアポなしで行くのはかなり久しぶりの事だったので緊張してくる。 ここまで来たのだから後戻りはできないよな。 人差し指に力を入れて一気に押す。 家の中から小さくベルの音がするが反応はない。 もしかしたら寝てるのかもしれない。 イタズラ半分に来たことに少し後悔しながらももう一度だけベルを鳴らす。 少しの沈黙の後帰ろうと踵を返す。 すると家の中で何かが倒れたかのような騒がしい音が聞こえてくる。 さすがに心配になってもう一度ベルを押す。 静かになったと思ったら鍵が開く音と共にゆっくりと扉が開かれる。 「しぇんぱーい。」 パジャマ姿で寝癖だらけの太一が情けない顔で扉の前に立っていた。
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