77人が本棚に入れています
本棚に追加
[2]
「部活の後輩に告られたー?」
わざわざ小さい声で相談したのにもかかわらず駿の声は教室に響き渡った。
クラスメイトの視線が集まる中、駿の耳を引っ張り傍に寄せる。
「でも、男なんだよ…。」
今まで告白されたこともした事もない俺からしてみたら大事件だった。
しかもそれが思ってもみない後輩からだとしたらなおさらだ。
駿は少し考えた素振りをしてから「ふーん」と呟いた。
「でもそれで何を困ってるの?好きなの?嫌いなの?」
駿の言葉に少し考える。
「嫌いじゃあないけど…。後輩として好きというか…。」
明確に答えることができずにしどろもどろになる。
「吉平せんぱーい!!」
急に名前を呼ばれビクッと体が反応する。
教室の後ろ扉を見るとそこには、今まさに話をしていた太一の姿があった。
今まで部室で会うことはあったが教室を訪ねてくるのは初めてだった。
なんと反応していいのか分からず固まっていると駿に肘で突かれ我に返った。
「何?」
平静を装いながらも声は上ずっていた。
「先輩昨日の事気にして部活サボるかと思ったんでコレ持ってきました。」
手に渡されたのは一枚のトランプ。
見慣れたピエロの姿。
嫌でも昨日の太一の言葉を思い出してしまう。
「あれって、冗談だろ…?」
希望を込めて太一に尋ねる。
「そんなつまんない冗談言うわけないじゃないですか。本当に先輩の事好きですよ。」
「ばっ!!!」太一の口を塞ごうにも既に手遅れだった。
教室の扉付近にいたクラスメイトの視線が痛い。
きっと駿もニヤニヤと聞き耳を立てているに違いない。
「行くから!!早く教室戻れ!!!」
怒鳴るように言ったはずなのに太一はニコニコと手を振って帰って行った。
「今の子?」
自分の席に戻ると想像通り駿がニヤニヤと聞いてくる。
黙ったまま頷くと面白そうに「いいじゃん」と言ってくる。
何がいいと言うのか眉間にしわを寄せて首をかしげる。
「パッチリした目に華奢な体。触り心地のよさそうな茶髪に人懐こい笑顔。そして何より従順そう。犬みたいで意外とありだと思うけど。」
部活の後輩を犬扱いされてムッとする。
「あいつの事変な目で見んな。」
駿に言い返すと「はいはい」と流される。
確かに前から懐いてくれていて可愛いと思っていたがそれは先輩後輩としての感情で恋愛感情ではない。
はたまた駿が言うようにペットのように思った事なっどもない。
太一に手渡されたトランプを見つめては重い溜息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!