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[10]
太一の家から帰ってから後悔は嫌という程した。
何を間違えてあんな選択に至ったのか…。
太一が気にしていないようだったのが救いではあった。
手にはまだ太一のモノを握っていた感触が生々しくある。
思い返してはため息をつく。
少しの間距離を置こう。
部活が一緒なのは避けようがないが他の所でできるだけ会わないように立ち回ろう。
今日が休みで学校が無いのは助かった。
部活で顔を合わせることもない。
家から出なければ太一に会うこともない。
お昼が過ぎても俺はベッドの上をゴロゴロとしていた。
特にすることもない。
ゲームも勉強もする気になれない。
それなのに昨日の太一との事が頭をよぎるとカッと顔が熱くなり悶えてしまう。
「吉平~。友達~。」
母ちゃんに呼ばれしぶしぶ体を起こす。
駿と何か約束してたっけ?
それより駿なら母ちゃんも友達なんて言わないか。
玄関まで行こうとしたところで廊下で鉢合わす。
案内されるように母ちゃんに付き添われる姿を見た瞬間部屋に逃げ込む。
鍵は無いので扉に全体重を乗せて開かないように力を入れる。
扉の外で母ちゃんと太一の声がする。
「せんぱーい。扉開かないですよー。」
さっきまで母ちゃんと話していた時の外行き用の声とは違いいつもと同じ太一の声がする。
ドアノブがガチャガチャと動くたびに心拍数が上がる。
「何しに来た!」
扉越しに聞く。
ドアノブを動かすのを止めて「お礼がしたくて…」と扉の向こう側から聞こえる。
お礼?
お見舞いの?
それとも抜いてやった事のか?
それのお礼なんて言ったら…。
太一にされる事を想像して顔が熱くなる。
「ダメだ!いらん!!」
半ば叫ぶように答える。
「えー、映画でも見に行きましょうよぉ。観たいのあるって言ってませんでしたぁ?」
間延びした太一の言葉に力が抜ける。
映画…?
自分がとんでもないことを想像していたことに呆れる。
気持ちを落ち着けてから太一を部屋に通す。
やましいことを考えていた事がバレないように目を合わせることができない。
「着替えるから待ってて。」
タンスから適当にシャツとズボンを取り出し着替える。
視線を感じ太一の方へ振り向く。
「先輩無意識に誘うの勘弁してくださいよ~。」
熱っぽい目をしている太一を見てシャツで上半身を隠した。
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