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 会話が途切れるたびに太一の口の中からカコッと飴を転がす音が聞こえる。 その音を聞くたびにキスの感触を思い返して熱くなる。 「お前、パーカーとか誰にでも貸すなよ。」 飴の音を聞きたくなくて口にした言葉はもっと恥ずかしいものだった。 こんなの嫉妬してますって自分から宣言しているようなものだ。 何とかごまかそうと「イタズラとか…」と言ってみるが手遅れだろう。 いつだって焦って余計な展開にしてしまう。 太一の顔を窺うと思った以上の満面の笑みだ。 机に腰かけていた太一はピョンと飛び降り俺に一歩近づく。 墓穴を掘ったのは俺だ。 甘んじて受け入れよう。 「やきもちっすか?」 椅子に腰かけた状態の俺を後ろから抱きしめるように腕を回してくる。 パーカーから駿の香りがかすかに漂う。 耳元で飴を転がす音。 簡単に振り払うこともできるのになんだか切ない気持ちになる。  「飴。ちょうだい。」 抱きしめられた状態のまま横を向くと太一の顔がすぐそばにある。 顔の距離が近くて緊張する。 「あ、はい」そう言って太一は俺に回した腕を緩めポケットに手を伸ばす。 「違う。」 わざとやっているのかと思う程タイミングが合わない奴だ。 太一の腕を引っ張り後頭部を鷲掴みにして自分に寄せる。 柔らかい感触。 何してんだろう。 太一の唇が開かれるのを感じる。 甘い香りと一緒にコロッと口の中に入ってくる。 舌で飴を転がしてから太一の唇に飴を押し込む。 飴を受け取る時にできた隙間から自分の舌をねじ込む。 太一は受け入れるように舌をからませてくる。 温っけ。 ヌルッとする感触は気持ちの悪いものではなく息が上がっていく。  飴が無くなってからも口の中に残る甘さを求めるように太一の口内に舌を這わせる。 唇を離したときには全身がだるいような倦怠感に襲われていた。 「先輩。激しすぎっす。途中飴飲み込んじゃいましたよ。」 お互いの唾液で湿る唇をパーカーの袖で拭きとりながら太一が言いう。 「ごめん。なんか。よく分かんないけどしたくなった。」 正直に口にすると、それでも嬉しいといったように太一は笑った。  「先輩も元気っすね。」 世間話のように言いながら下半身を触られる。 ビクッと内またになる。 確かにキスの最中に反応してきていたのは分かっていた。 座っていれば隠し通せると思っていたのに太一にはかなわない。 太一は恥ずかしがる素振りもなく普通に歩くがズボンは膨らんでいる。 部室の鍵を閉めたかと思うとそのまま俺に寄ってくる。  「触りっこしましょう。」 言っている意味を理解する前に太一はズボンのベルトを外してくる。 「いやいやいや!それはまずい!!ダメダメ!!」 必死にズボンを押さえながら言う。 自分からキスをしておきながらも、それ以上の事は考えが追い付かない。 「あっ、もしかして先輩、早漏なんすか?先にイッてもいいっすよ。」 太一の挑発するようなセリフにまんまと乗せられてしまう。 「今の言葉、後悔すんなよ!」 自らズボンを下し後には引けない状態になっていた。  「パンツ汚れたら替えないんで直でお願いします。」 太一に羞恥心と言う物は無いのだろうか。 自らズボンとパンツを下し手の届くところにティッシュを持ってくる。 恥ずかしがっている方がもっと恥ずかしくなりそうでパンツを下す。 色んな考えが頭を占領していたので俺のモノは少し元気を失っていた。 太一のモノは言葉とは裏腹に直ぐに逝ってしまいそうなほど勃っていた。  「もっかいキスしときます?」 太一の言葉に下半身が反応する。 「大丈夫そうっすね」そう言って太一は自分のモノを握った。 触り合うんじゃないのか? そう思った瞬間に太一の手が俺のモノを掴む。 ヌルッとするのは太一の先端から溢れ出ているものだろう。 そう考えると一気に下半身に血液が集まるのを感じる。 太一の手の動きに体がビクッと反応してしまう。 「先輩も触ってくださいよ。」 太一の声に俺も手を伸ばす。 先端から溢れているものを伸ばすように先をこねくり回す。 太一は口を結んで耐えているような顔になる。 生意気なくせしてやっぱりかわいい。 太一の顔をもっと歪ませたくてゆっくりと手を動かす。 俺の視線に気が付いたのか太一が顔をあげる。 ゆっくりと動かしていた手が急に早く動かされる。 「ちょっ、たいちっ。んっっ。」 一気に快感が襲ってくる。 俺の物なのかグチュグチュと卑猥な音が部室に響く。 「やっ、んっ…。ちょっ、まっって。」 俺の声に反応するように擦る手を緩める。 「先輩もサボらないでくださいよ…。」 あまりの刺激に自分の手が止まっていたことに気が付く。  太一の先端からトロッとした液体が止まることなく溢れ続ける。 わざと音を立てるようにして太一のモノをしごく。 「先輩。そろそろ…。」 太一の言葉に頷くことしかできない。 動かすスピードを上げると太一もしごく力を強めてくる。 「んっ…。」 俺が絶頂を迎えた後に俺の手にも生暖かい感触が広がる。 太一も耐えるように俺のモノを握ったまま動けないでいる。 全部出きった事を確認してから太一のモノから手を離す。 太一は俺のモノを離す瞬間に先端を強めに撫でていった。 敏感になっている部分を触られて情けない声が出てしまい腰が引ける。  ティッシュで手と自分のモノを拭く。 やっぱり俺より太一のがでかいな…。 敗北感を感じながらも動こうとしない太一にティッシュを渡す。 「これ、吉平先輩のなんすよね。」 何かを悩むように潤った手を眺める太一。 考えが読めた気がしてティッシュを数枚引き抜く。 太一の手を拭こうとした瞬間、太一は自分の手を舌先ですくうように舐めた。 「まずっ。」 眉を下げ悲しそうな顔をする太一の頭を叩いて手にティッシュを乗せる。 自分から出たものを舐めるなんて想像もできない事だったが、太一がそれでも簡単にやってみせてくれるものだからなんだか愛おしく感じてしまう。  「駿の匂いなんてなんで知ってるの?」 ずっとモヤモヤとしていた気持ちを吐き出したくて口にする。 一瞬きょとんとした顔をした太一だったが納得したように頷く。 「香水っすよ。駿先輩の香水前に嗅がせてもらったんす。」 駿は香水なんてつけていたのか…。 いつも一緒にいて同じ香りがするのは分かっていたが香水だったのか…。 今まで気が付かなかった自分に驚く。 「ちゃんと帰ったら洗濯しますから大丈夫ですよ!」 何が大丈夫なのか分からないがホッとしている自分も確かにいる気がした。  『駅までいい』と言い張る太一に根負けして一緒の電車に乗る。 太一が平気そうにしていてもあんな姿を見たら一人にはしておきたくなかった。 前回と同じようにドアの隅に守るように太一を囲う。 「駿先輩にパーカー貸したのは、駿先輩に風邪ひかれたら困るからですよ。吉平先輩がお見舞いに行って間違いが起きたら、俺正気保てる気がしませんもん。」 太一の駅に着いてから別れ際に言われる。 間違い? 首をかしげてみるが太一は嬉しそうに「考えてください」と笑った。 太一は感謝の言葉を口にしながら走るように改札に向かった。 俺は太一の後ろ姿を見送りながら太一の言葉の意味を考えて顔が熱くなった。
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