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 「これうちの…。」 昼休みに押しかけてきた太一の相手をしていると駿が可愛らしい女の子を連れてきた。 「橘 日和(たちばな ひより)です。」 ぺこりと頭を下げると髪の毛がサラリと肩から滑る。 「後輩ちゃんとは同じクラスなんだよな。」 駿が太一に言うと「そうっす!」と答えた。 太一と同じクラスと言うことは一年生か。 華奢で色白で守ってあげたくなるような女の子だった。 駿も俺の知らないところで頑張っていたんだな。 そう思い駿に大きく頷く。 駿は気味悪そうに俺を見ながら日和ちゃんと一緒に教室を出ていった。  「日和ちゃんマジ可愛くねぇ!?駿凄いな!や、マジ羨ましい!!」 駿が教室から出ていってすぐに太一に言う。 太一はあからさまに嫌な顔をしていたが興奮の方が勝っていて言葉が止まらない。 「あんな彼女いたら最高だろ!隣歩くだけで緊張するわ!」 一方的に話していると駿が戻ってくる。 「日和ちゃんはもういいの?」 駿に聞くと同時に太一が背を向けて教室を出ていく。 駿が不思議そうに太一の背中を見送る。 「なんかあったの?」 思い当たる節はあったが友達の彼女を褒めたからと言ってやきもちを妬くのはいかがなものか。 駿の彼女だからもちろんそんな目で見るつもりはない。 「知らね。」 半ば呆れたように言う。 「それより日和ちゃんも陸上部なの?あの細い体でよく走れるな。」 前に聞いた駿の好きな人の話を思い出しながら聞く。 「は?日和は陸部じゃないよ。吹奏楽部。」 食い違う話に首をかしげる。 「だって駿、前に同じ部活内に好きな子いるって…。」 話しの途中で意味が分かったのか駿があきれ顔になる。 「吉平。俺の名字覚えてる?」 急に聞かれ反対側に首を傾げなおす。 「橘。日和は妹。」 全ての謎が解けたかのようにスッキリとする。 太一の反応を思い返してみても太一は駿の妹だと最初から知っていたのだろう。 それにしても駿の紹介の仕方が悪くないか? 『うちの』って…。 確かに家(うち)で間違いはないが、妹だと言えばこんなややこしい事にはならなかったのに。 駿の事を軽く睨みつけると「なんだよ」と言われる。 少しふて腐れながら机に突っ伏して太一になんて謝ろうかと考える。
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