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 太一のクラスに来るのは初めてだった。 上級生が下級生のクラスに来るのが珍しいのか周りの視線が痛い。 太一の姿を見つけて軽く手を上げる。 一瞬嬉しそうな顔をしたかと思うと急に不機嫌そうな顔に変わる。 「なんすか。」 まだ怒っているアピールをしている太一に肩に片腕を回し「一緒に部活行こう」と誘う。 ぶすくれたまま口を開こうとしない太一を部室に連れて行く。 他の部員がいる前では話辛いので今日も負け越すことを狙う。  「先輩お疲れ様でした~!」 狙うと期待が外れることは良くあることで珍しく一抜けしてしまった。 太一が負け越すことも考えたが太一も二番目に上がってしまった。 鞄をもって部室を出ようとする太一の腕を掴み自分の教室に戻る。 扉を開くとパート連をしているのか吹奏楽部が教室を使っていた。 気持ちは焦るばかりで黙って腕を引かれる太一を振り回しながら使われていない教室を探す。  開けては使用中、もしくは鍵がかかっているところばかりで情けなくなってくる。 さすがに嫌になって近くのトイレの個室に太一を連れ込む。 誰か入ってくる可能性はあるが黙っていれば個室に二人もいるなんて思いもしないだろう。 狭いので太一を便座に座らせる。 息を整えて何から話そうと思っていると太一が吹き出して笑う。 「先輩どこ行ってもダメで…。笑い我慢するの大変でしたよ…。」 笑いながら口にされて恥ずかしい気持ちよりも安堵の息が漏れる。 やっぱり笑っている太一の方がいい。 そう思い太一の頬に手を伸ばす。 触れた手に寄り添うように首をかしげる太一。 その行為が可愛らしく感じる。 「日和ちゃんの事は勘違いで…。」 かいつまんで話すと太一は「そんな事だろうとは思ってました」と笑っていた。 先程までぶすくれていたのは嘘のようだった。 俺を見上げながら笑う姿を見ていると胸がキュウッと締め付けられる。 「今日は飴食べてないの?」 俺の質問に「確かめてみます?」と答える太一。 唇が触れ合って舌を伸ばす。 唇の感触を舌先でなぞりながら太一の口内に舌を入れる。 いつもの甘い味はしないが太一の口内に舌を這わせる。 太一の舌を軽く吸うとザラリとした舌の感触がする。 逃がさないように頭の後ろに手を回す。 角度を変えては舌を深く入れる。 口を塞がれながらも隙間から吐息が漏れる。 太一の息を感じながらもゾクゾクと鳥肌が立つ。 チュッ。という音がトイレに響く。 わざと音を立てているのか下半身の疼きは止まらない。 足りない。 キスだけでは物足りなかった。 もっと欲しい。 太一の首元を撫でると太一は体を強張らせた。 唇を離し首元にキスをする。 舌を這わせると太一の口からは甘い声が漏れる。 固くなったモノを太一に押し付ける。  「でもさー。休みの日までつぶれるのは痛いよなー。」 トイレに入ってくる声が聞こえて太一と距離を取る。 太一はイタズラに笑って便座から立ち上がり背伸びしてキスをしてくる。 足には太一の固くなったモノも当たっている。 無理やり口に舌を入れられてゾクリと背中に電気が走る。 太一はトイレから人がいなくなるまでわざとらしくキスを続けた。 緊張から縮こまっていると思った俺のモノも背徳感にそそのかされて元気なままだった。 「また抜きっこします?」 太一の言葉に生唾を飲む。 でもいいのか? このまま快感に身を委ねるような事をし続けていたら太一に気を持たせているのも同じだ。 それならいっそ何もなかった事にして前のように先輩後輩に戻るべきなのではないか? そしたら太一も他の人と新しく恋をして…。 俺以外の人と…? 想像して鳥肌が立つ。 太一が痴漢にあった時のような嫌悪感。 太一のパーカーから駿の香りがした時の苛立ち。 なんだこれ? 自分の頭が混乱しているのが分かる。 いつまでも黙っている俺を見上げる太一の顔を見る。 なぜか急に恥ずかしくなって「悪い」といってトイレを一人で飛び出した。  一人で真っ直ぐ帰る帰り道でも太一の事が頭をよぎる。 一人でまた恐い思いはしていないか。 嫌な思いはしていないか。 俺は太一が好きなのか? 何度も考えては、うやむやにしてきた感情を整理しようとしてみる。 結局好きってなんなんだっけ? 投げやりな気持ちになっては太一の笑顔がちらつく。 日和ちゃんは確かに可愛いと思うが太一の方が…。 いや、その考えはまずくないか…? 頭を振っては雑念を振り払うように歩いた。
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