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「駿くーん。」
あまり眠れなかった目をこすりながら駿に絡む。
「俺、もうよく分からん…。」
主語のない俺の言葉の意味を考えながらワシワシと頭を撫でてくれる。
「あっ、あれ。」
駿が窓の外を指さす。
指さされた方を渋々見ると太一の姿。
今は太一の姿を見たくない。
顔を背けると駿に両手で頭を挟まれてもう一度窓の方へ向けられる。
「後輩ちゃんじゃなくて、その隣。」
太一の隣には太一と話しているのか気弱そうに笑う男の子の姿があった。
「俺が好きな奴。」
駿の言葉に目を見開く。
可愛らしい顔はしているが男子の体操服を着ている。
間違いなく男子なのだろう。
「気が付いたら…ね。」
駿が珍しく気弱そうにつぶやくので俺が泣きたい気持ちになる。
駿に抱きつきウンウンと頷く。
「いや、そういうのいらないから。」
こんな時まで冷たい奴だ。
駿が男が好きでも別に嫌悪感はない。
それは相手が駿だからだろう。
別の知らない人同士が男同士で抱き合っていたら多分気持ち悪く感じる。
俺の中にはきっと意識していなくとも偏見がある。
交際は男女。
それが普通。
普通で常識。
多くの人がそうなのだからそうれに従うべき…。
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