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 放課後いつも通りに部活に参加する。 早く帰りたいと思っていると案の定負け越してしまう。 一緒に残る太一に「先に帰っていいよ」と言うが断られる。 言っても帰った事は一度もなかったので想定内だった。  二人だけになった部室には沈黙が続く。 太一も何か感じているのか口数が少ない。 「先輩。ババ抜きしません?」 太一の言葉に素直に従う。 ペアになったトランプを机に積み上げていく。 二人だと勝敗がすぐについてしまう。 俺の手元にはジョーカーともう一枚。 太一の手元には一枚。 太一はジョーカーに手をかける。 「先輩。先輩はどうしてそんなに負けてばっかりいるんだと思います?」 太一の言葉に首をかしげる。 「顔に出やすいとか?」 太一がジョーカーを俺の手元から抜き取り、机に裏面を上にしてカードを置く。 「ここ」そう言う太一の手元を見ると微かに『・』のしるし。 そんなマーク他のものにもあったかと手持ちのトランプを確かめる。 手持ちのトランプにはしるしはない。 太一はジョーカーを机から手元のカードに混ぜる。 種明かしされたからにはどちらがジョーカーか直ぐに分かる。 なんで今まで気が付かなかったんだ…。 自分のマヌケさに笑えてくる。 そして部員達がいつも申し訳なさそうに部室を出る理由が分かり妙に納得してしまう。  「先輩。勝負しましょう。」 太一の言葉に顔をあげる。 勝負も何も出来レースだったのは今知ったばかりだ。 負けようがない。 「俺が勝ったら俺と付き合ってください。」 太一の言葉に息をのむ。 太一が勝つということは俺が負けなければいけない。 俺がジョーカーをわざと引けば太一は残りを引くだろう。 ジョーカーがどちらか分かっているのだからこれは勝負ではなくただの告白だ。 手元に残った一枚のカードを見つめて太一からトランプを引き抜いた。
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