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インターホンを押す。
時間が遅いこともあって家族が出るだろうと思っていたがインターホン越しに本人の声がする。
名前を告げるとインターホンが切られ、少しして家の扉が開かれる。
「なんすか。」
久しぶりに見た顔に涙がこみ上げる。
家の前では話辛いと言って公園に連れ出す。
ポケットからトランプの束を取り出し裏側にして広げる。
裏面のデザインはバラバラでサイズも違う。
「これっ。もしジョーカー引いたら付き合ってください。」
十数枚のトランプを広げ太一に頭を下げる。
「急になんすか?」
まだ不機嫌そうな声の太一に包み隠さず思っていたことを話す。
「でも、俺っ。一番大切なものが何か分かったんだ。今更で、太一の事傷つけた後で申し訳ないんだけど…。」
言葉の途中で太一にトランプを一枚引かれる。
トランプを見て呆れたように笑う太一。
「当たりっすね。」
ジョーカーを見せながら笑う太一を見て涙がこみ上げる。
多分駿といる時で涙腺が壊れたのだろう。
持っていたトランプを放り投げて太一に抱きつく。
さまざまなジョーカーの絵柄が地面に散らばる。
「先輩バカっすね。」
太一の言葉に抱きしめる力を増す。
「トランプあんま売ってなくて…。こんだけしか集められなかった。」
太一は俺の胸に顔を埋めながら笑っているのか泣いているのか肩を震わせた。
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