卒業編

2/3
前へ
/48ページ
次へ
 最後を刻むようにゆっくりと深いキスを交わす。 背が低い太一が見上げるように口を開くので覆うように舌をからませる。 何度もしてきたキスでも下半身は正直に反応する。 太一の吐息、視線や熱が俺の体温を上げていく。 ねっとりしたキスとは裏腹に下半身の疼きは既に焦れていた。 ズボンを自ら下し机に肘をつく。 「もう欲しい…。」 いつもならお願いされても口にしないような言葉が口から洩れる。 太一も手慣れた手つきでお尻をほぐし自分のモノを入れてくる。 最初は入れるだけで精一杯だったのに今ではすっかり太一の形に染まっていた。 根元までしっかりと入っているのが分かりゾクゾクとする。 太一の顔が見えない事をいいことに涙を流す。 毎日のように顔を合わせて話して触れ合っていたのにそれがなくなると思うと急に不安になる。 電話やメッセージのやり取りだけでは足りない。 常に傍に置いて手の届くところにいてほしかった。 知らない間にこんなに太一にハマっていたことに気が付く。 太一が俺の腰を支えながらゆっくりと動く。 ローションの音が響く中、腰に水滴が垂れるのを感じる。 もしかしたら太一がまた泣いているのかもしれない。 考えただけで胸が痛んだ。 今日だけは声を押し殺して静かなセックスをした。  「泣いたし、出したしスッキリしましたわ!」 さっきまでの、しおらしい姿とは裏腹に笑う太一を見て呆気に取られる。 部室の窓を開けて換気をしながら太一が微笑む。 「卒業おめでとうございます。」 改めて言われると胸が締め付けられる。 頷くことしかできない俺に抱きついてきたかと思うと「一年待っててくださいね」と耳元で言われる。 俺は我慢できなくなって涙をこぼす。 太一にしがみつくようにして声を殺して涙を流した。 卒業ってこんなにも寂しいものだったっけ? 特別な存在がいるというだけでその場を離れるのがこんなにも痛いとは思わなかった。 「待ってる…。」 太一の進学先など聞いていなかったが太一が『待ってろ』と言うなら俺は待つしかできない。 俺は顔を上げて太一のキスを受ける。 それが約束の証のように…。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加