プロローグ

1/4
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ

プロローグ

「……イッテェエ!」  突き抜けるような痛みが走り、熱を帯びて右頬が腫れ上がってゆく。  寝惚け眼に涙を滲ませつつ眉間にシワを寄せた俺―――「サイ」は、向かいの席に座る女を睨み付けた。 「な、何すんですか、いきなり!」 「なにって……害虫駆除よ。あんたの生き血をしつこく狙ってたミクロスナイパーの」  手元のゲーム機を注視したまま平然と答える女は―――「黒埜(くろの)黎美(くろみ)」。  通称―――クロノさん。  無欲な男でも骨抜きになってしまう文句なしの麗人とは、数日前に知り合ったばかりの仲だ。 「それはどーも、あんがとです」 「気持ち込もってないわねぇ。もっと感謝したら?」 「はぁ……どぅも」 「何それ。あんたバカ? ……あーあ。つくづく思うけど。器量の悪いやつは性格も礼儀もダメね。特に最近のガキはクズ。親がクズだと子供もそうなる。あーヤダヤダ。世の中便利になってバカがトップを仕切り出すと、()()しらおかしくなるわ」  クロノさんの魅惑的な唇から発せられた暴言の数々に腹の底から怒りが湧き上がってくる。  だが否定したくても、俺もその「ガキ」に含まれてる以上、説得力に乏しい。  俺自身、自分は人並みより下と認識してる。  男にしては背が低く、顔は悪くないけど普通の域。所謂、モブ勢。  学校の成績は中の下で、特筆すべきことのない平凡な17歳の男子高校生だ。  そもそも、なぜ、こうなったか。  冷房設備がない鈍行列車の中で、俺は数日前の記憶を思い返した。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!